施術師就任のためのンゴマである「外に出す」ンゴマ(ngoma ya kulavya konze)一般についての解説はここを見ていただきたい。
施術師のキャリアは、ムルング(ムルング子神 mwanamulungu1)11を「外にだす」ンゴマを開催してもらうことから始まる。それが無事終われば、その後は、同様な要求を持った他の憑依霊たちについても外に出してもらうことが可能になる。こうして施術師はたくさんの憑依霊を持ち霊とするより強力な施術師になる道を進んでいく。
ここでここで紹介するのは私が二度目に居合わせることができたムルングを「外に出す」カヤンバである。施術師は前回1990年のムルングを「外に出す」ンゴマを主宰したムァインジ(Mwainzi)さんと、彼の妻アンザジ(Anzazi)さん12。前回はンゴマを受けるムウェレ(muwele59)のムニャジ13との関係で参加したのだが、今回はムァインジさんからの招待だった。前回は初めてのことでもあり、ンゴマの表舞台(太鼓演奏の場面)で何が起きているのかに関心があった。そこで今回は、表舞台の方ではなく、施術師たちが舞台裏でやっているさまざまな作業の方をできるだけ見ることにした。面白いという点では、どちらも面白いのだが、情報量では後者が圧倒的に多い。勉強になりました。
施術師: 男性 Mwainzi wa Lugo(Memwakaの施術上の父)、女性 Anzazi(Memwakaの施術上の母)、補助 Chizi wa Kakongo(Memwakaの僚妻、故Jeffa wa Mwachiti氏の未亡人)、Munyazi Mechombo(1990年に施術師になったばかりのMwainziの施術上の子供(弟子)) 患者: Memwaka(故Jeffa wa Mwachiti氏の未亡人、Mumbo氏の母)
開催場所: Mumbo wa Jeffa氏の屋敷(Bang'a) 日時: Oct.25,Fri,1991--Oct.26,Sat,1991
ムウェレのメムァカさんとは全くの初対面。小柄の中年の女性だった。最初の「嗅ぎ出し(ku-zuza36)のカヤンバ」の待ち時間に聞いた話では、7人の妻がいた故ジェッファ氏の未亡人の一人。ジェッファ氏の死後、息子のムンボ氏の屋敷に暮らしている。私が暮らしていた「ジャコウネコの池」地区の大物C長老もジェッファ氏の息子だが、ムンボ氏とは親子ほどの年の開きがある。メムァカの最後の子供は、学齢期の少年である。 メムァカは、多くの病気を経験し、憑依霊関係の治療を重ねてきた、多くの憑依霊をもった女性である。その日に起こるだろうことを夢で知らされ、それを家族に語り、実際にその通りになるので家族のものが驚くといった「発狂」も稀ではなかった。ンゴマも何度も経験している。そして多くの霊が「仕事」(彼女が施術師になること)を要求していた。彼女はそれを拒み続けてきた。しかし、彼女が最後に産んだ子供は、もう小学校に通っていてもおかしくない年齢なのに、まだ歩くこともできない。占いの結果、ムルングが、度重なる要求の拒絶にしびれを切らして、その子を捕らえたのだというものだった。メムァカが「外に出され」施術の仕事を始めたなら、子供は歩き始めるだろうと。そしてついにメムァカはその要求に屈することになった。
Oct. 23, 1991, Wed, kpwisha
9時前にMwainzi12, Murina, Chari14 来訪。週末のChariのngomaの予定がMwainziのngomaとぶつかって難しくなり、相談の末、来月まで延期することになったらしい。ヤギの調達でもたついてMwainziに日程の確認をするのを怠ったのが原因。計画性なし。代わりにMwainziに金曜のngomaに招待される。Mwanamulungu11のkulavya nze16。.... Chari, Murina, Mwainziの4人でChariの家に行き、ngomaを延期する旨Chariの霊たちに対してkukokotera64。
Oct. 25, 1991, Fri, kpwaluka
午前10時出発。Mwainziとの約束は午後1時だったが、その前にMurinaのところへ寄っていこうと。しかしMurinaもChariも不在。Tabu65によるとMaliakani66にMuzungu mumiani67の治療に、朝早く発ったという。 キナンゴでチャイとマハムリ。タバコを2箱買って、Mwainziのところへ。自転車だと楽な道のりだ。12時前に着く。ちょうどバラザ68が始まるところで同席する。学校を建てる問題で、金を募っている...14:00終了。 Mwainziの屋敷でwari69とnyama70。Munyazi13、4時ごろ到着。全員でngomaを開催する予定の屋敷に。例の「すぐそこ」にまたひっかかる。歩いて1時間以上かかる。この間に自転車もパンクするし、ろくなことはない。到着してすぐkuzuza36の準備。手抜きなく、Mwainziは闇の中を遠くのmuzuka71に向かって出発。私は遠慮する。来る途中で蛇を見たばかりなので、闇の中を行くのにびびったということもある。 カタナの祖母(分類上)Chizi wa Kakongoが来ている。カタナくんのつてで、ニョンゴーの治療についてお話を聞いたことのある施術師。向こうは私を覚えていたのだが、私は一度会ったきりだったので忘れていた。ごめん。Muwele59のmukakazi73だそうだ。Mwainzi帰宅後、wariとkuku74で夕食。ngoma、11時近くになって始まる。徹夜だが、私は2時から4時くらいまで仮眠。bamba75の音がうるさすぎて、すぐに録音は断念。
Oct. 26, 1991, Sat, kurimaphiri
午前中、自転車のパンク修理。近所に奇跡的にsolution77を置いているキオスクがあり、一瞬にして直る。ありがたい。朝食チャイとマハムリで生き返った心地。12時まで例のごとくグダグダ過ごす。例によって写真をいっぱい撮らされる。珍しくfungu78の支払いであまり揉めない。Mumbo(Muweleの息子)が、抜かりなく揃え、さっさと払うつもりだったらしい。anamadzi79たちが図に乗って要求するが、それも想定内? すぐにでも辞去したかったのだが、昼食を食べていくよう強く望まれ、午後になってようやく解放された。頭痛がするのでパナドルを飲んだ。... (帰宅後)すぐ水浴びと洗濯。夕食はまたず、パパイヤとオレンジを食べて5時にベッドに入る。
例によってフィールドノートをほぼそのまま転記したテキストをそのまま貼り付ける。 今年2024年に入って手書きのフィールドノートからテキスト化した。文章などに一切変更は加えておらず、ドゥルマ語がそのまま使われていたりして、私以外には読みづらい代物。ドゥルマ語箇所は注釈の形で補足説明することにしている。セクションごとの表題やリンクは、ウェブページ化する際に追加。(DB...)は後にフィールドノートに紐づけた書き起こしテキストの、該当箇所を示す番号。
(DB 3477-3517)
17:40 小屋の中でmuwele59を入り口に向けて座らせmakokoteri81 (by Anzazi) アンザジによる唱えごと ドゥルマ語テキスト(DB 3478) mwanamulungu1の歌から開始 mueleの前にChizi wa Kakongoが座り"kazi ni rero, pore82"とmuweleに 語りかける 17:50 muweleすぐに身体を前後に揺すり始める Mwainzi"ngoma rero, ngoma rero83"と煽る 18:00 Mwainzi、kayambaの輪の中に入って踊り始める kayamba players 全員立ち上がってkayambaを打つ Mw: ngoma rero, ngoma rero. Nahenza mwanangu aphole.84 Chizi: 良く聞き取れない 18:05 Mw 輪の外に出て、ushanga85を頭につけ、上半身裸になり、腰にmulungu の布を巻き、肩にshera57の赤い布をまとって登場 歌はmulunguの歌がまだ続いている Mw muweleの前に座って muweleと握手しながら語りかける "wira ni wako etc.86"
kuzuza36において用いられる楽器はkayamba87とbamba75。 18:15 muwele 外に出る muweleに代わってMwainzi、mulunguの布を被り,kayambaの輪の中に 戸口を向いて座る mwanamulunguのkusuka89から始める MwainziとChizi、普通に会話を交わしている Mw 二曲目から身体を小刻みに振るわせ始める 18:25 ukumbuke... 激しく踊る。 Anzazi入ってきてMwainziの横に座り、しきりとけし掛ける 18:27 muwele再び小屋の中に入り、Mwainziの横に座らされる Mwainzi、muweleに対して何かしきりに話しかけている 18:35 Mwainzi自らmupemba17の歌にスィッチ 18:36 すぐにまたmusambala90の歌にスィッチ 小屋の外に移動し、chinu91のところでkayamba Mw mavuo92をかぶり、口笛を吹きながら早足で屋敷内を歩き回り mwingo93を振り回しながら外の様子を伺う素振り ついに一人で屋敷の外に歩き出し、kayamba演奏者、その他の人々その後を追う
Munyazi によると、Mwはmusambalaで出発したが、途中でlaika38の歌に変わる という。muzuka71から戻るときにはまた別の歌に変わるが、屋敷に近づくと 再びlaikaに変わる。
muweleの名前はMemwaka、Jeffaの7人いた妻の一人 Chizi wa Kakongo もJeffaの妻(従ってMemwakaの僚妻) Chiziyamonzo94のChiti氏はJeffaの息子 JeffaとMemwakaの間に生まれたのがMumbo氏
20:00 Mwainziたち屋敷に戻ってくる
muweleは小屋の中で足を戸口の方向に向けてmulunguの布を
かぶせられて仰向けに寝ている
Anzazi、Mwainzi、ndonga95を各関節に吹きつける
mulunguの布を広げてkuku74 mwiru96でmavuoの水を注ぎ、mukongo97にかける
"vugula...98"
laikaの名前を挙げたてる
20:20 mukongoを外に連れ出し、chinuの前で座らせてkayamba
mulunguの歌に戻る
Anzazi: tserera、tserera...99
mukongo、立ち上がって踊り始める
masai100のfumo103を与えられ、それを持って踊り始める
20:30 fumoを別の女性に渡し、自分から座る kayamba players 自分たちだけで盛り上がっている Anzazi、chiyuga aganga104を歌い始める(kusuka) muwele、座ったまま,身体を前後に Mwainzi: muvugule, muvugule, machero saa mbiri chikala walembwa...106 Anzazi、いきなり踊りながら私のところに来て握手を求める。 Anzazi、Mwainziに何か一生懸命しゃべっている。overactionで、あきらかに golomokpwa107しているのがわかる。 kayambaが鳴り続けているので、話の内容はまったく聞き取れない 録音も無理
Munyaziによると、AnzaziはMwainziにchiyuga agangaの布を買うように要求している。 その後Muweleの息子に、Mupemba17の布とpehe108とmukpwaju[^mukpwaju]を買うように勧めていた
21:00 kuzuza 終了 Anamadzi79たちはMumboに200シル109要求 kadzama110 4(1はuchi111で、後は各20シル) mbuzi112 1(kuku74+4シル)113
ここからは太鼓が中心のンゴマ
23:50 ngoma再開(小屋の中で)
Mwainzi 戸口にchiparya115のuchi111を垂らしつつgomba116
ムァインジによるクハツァ114
ドゥルマ語テキスト (DB 3479)
(クハツァの様子。背後にンゴマの太鼓と歌が聞こえる)
muweleはnyungu21を膝の間に挟み、全身をnguo117で覆ってkufukiza118
戸口の方を向いて
kufukizaが終わるとmuweleはvuri119の方向を向かされる
00:10 外に出てngoma
01:00 bulushi(白いスモック)
ubao120を置いてやると、そこに何かを描いてchititi123を振る
しかしそればかりなのでAnzazi、別のnyamaの曲に変えるよう促す
(02:00-03:50) 仮眠(うっかり寝過ごす)
04:00 Nyariからlaikaへ
05:00 mwana wa ndonga3を整える Mwainzi、Anzaziの各々が、mihaso124、pande5を入れ、mavumba9(ndago125)、 黒いkuku74の毛を毟ってmakokoteri81 ムァインジによる瓢箪子供に対する唱えごと ドゥルマ語テキスト (DB 3480-3482) (唱えごと冒頭部、屋内だが太鼓の音が聞こえている) アンザジによる瓢箪子供に対する唱えごと ドゥルマ語テキスト (DB 3482-3485) kutsinza126して、その心臓を取り出しmulunguのchidemu127に包んできつく縛り、ndongaに入れる その後mafuha128を加える ubani129を燻してmakokoteri81 ムァインジによる出来上がった瓢箪子供に対する唱えごと ドゥルマ語テキスト (DB 3486-3489) アンザジによる出来上がった瓢箪子供に対する唱えごと ドゥルマ語テキスト (DB 3489-3493) (アンザジの唱えごと、冒頭部)
05:30 Memwakaの息子MumboとAnzaziがndongaを隠しに行く ドゥルマ語テキスト(DB 3493)
ムァインジとともに前庭、ンゴマの場に戻る。
masai100、mudigo130と演奏
06:00 Muduruma29の大乱舞始まる
何人も(少なくとも4人)がgolomokpwa107
golomokpwaしたものどうしでmatungo131のやりとり
みんな、嬉しそうだが、不気味
ぞんざいな振る舞いを互いにしあう
06:45 Dena
すっかり夜が明けて太陽が昇ったのに、もうみんな好きでやっていると
しか思えない盛り上がりよう
07:10 Mwainzi、mulunguを打つように指示する
しかしmudurumaでgolomokpwaしてゲーゲーいっていた女性がいて、Anzazi
は彼女がmupemba17を必要としていると主張
07:16 Mwainzi、女性に憑いているmupembaを説得
07:20 やっとmulunguに入れる
07:30 Memwakaブッシュに行ってmwana3をさがす。 見事にmwana wa ndongaを見つけ出す。一瞬。
ただちにmihini132が始まる。
07:40 白kuku、黒kuku、黒ヤギ
uchi111の入った瓢箪、chiparya115を用意してmihini132に出発
murindaziya133のところで
一発でmuhi wa mwishoにたどり着いた!
Mwainzi & Anzazi、黒いkukuの毛を毟ってkukokotera64
黒い鶏で草木のクハツァ(kuhatsa114)
ドゥルマ語テキスト(DB 3494-3497)
白いkukuの毛を毟ってmakokoteri81
ムァインジ白い鶏で草木のクハツァ
ドゥルマ語テキスト(DB 3497-3498)
Mwainzi、uchi111でkuhatsa
ムァインジ、ヤシ酒でクハツァ
ドゥルマ語テキスト(DB 3498-3500)
Anzazi、uchiでkuhatsa
Mwainzi、黒ヤギの首をもち、muwele 黒ヤギの左耳をもち、
Mwainzi、makokoteri81
ムァインジ黒ヤギに対する唱えごと
ドゥルマ語テキスト(DB 3501-3503)
08:05 黒ヤギkutsinza126
08:10 他のmihiのところで黒kuku、白kukuでkuhatsa114を繰り返す
08:30 mudzi134に戻る
mburuga121テスト ドゥルマ語テキスト(DB 3504-3508)
(占い冒頭部、もう熟練した占い師さながらの技を披露) makokoteri by Anzazi
アンザジによる占い終了後の唱えごと
ドゥルマ語テキスト(DB 3509-3514)
09:00 chikaphu135にmburugaの金をいれ、布を入れて、瓢箪とchititi123を入れる
Munyazi, muduruma その他のnyamaに対してmakokoteri81 ムニャジの他の憑依霊に向けての終了の唱えごと ドゥルマ語テキスト(DB 3515-3517)
冒頭でも紹介したように、今回のンゴマのムウェレ(muwele59)であるメムァカさんは、すでにたくさんの憑依霊をもった女性だった。それらの霊の多くが、仕事を欲しがっていた、つまりメムァカが施術師になることを欲していた。患者が「外に出される」ンゴマによって施術師(muganga)となり「外に出る」ことは、同時に、それによって霊自身も、自分の子供(瓢箪子供3)を作って=産んでもらい、自分たちも「外に出」て、施術師の癒しの仕事(uganga20)の担い手になることができる、ということである。霊たちが仕事をしたがる、というのはそういうことだ。ここで訳出した施術師たちの唱えごとを読めば納得できるだろう。ムウェレを「外に出す」こと、憑依霊を「外に出すこと」、「癒しの仕事」を「外に出すこと」、ムウェレが癒しの仕事を手に入れること、憑依霊が癒しの仕事を手に入れること、憑依霊であり、憑依霊の子供でもある瓢箪子供を、ムウェレの子供として差し出すこと、それを憑依霊の子供として憑依霊に差し出すこと、が互換的に語られているのがわかる。
結構じゃないか、さっさと出してもらえよ、と言いたいところだが、話はそう簡単ではない。ンゴマ開催の費用の問題以上に(ほとんどの患者にとってそれは大きな問題ではあるが、今回のムウェレは裕福な一族に属しており、日記の記述からもわかるように費用の問題はなかったと思われる)、いろいろ面倒を抱え込むことになるからである。それを理解していただくためには、特定の施術師の生活をある程度長期にわたって見ていくことが必要になるだろう。とにかく、メムァカさんは霊の要求を拒み続けてきた。彼女の末っ子が、学齢期に達しているのに歩けるようにならないという問題が、霊たちの同じ要求のせいだと(占いで)判明したことで、彼女の拒否の壁はくずれることになった。
ムウェレは、すでに多くの霊をもち、ンゴマ経験も豊富であった。ライカやシェラたちが彼女のキブリ(chivuri35)を自分たちの棲み処に隠しているということで、ンゴマを始める前に、まず奪われたキブリを取り返す「嗅ぎ出し」が行われる必要があったのも、彼女が多くの霊の持ち主であることを物語っていた。ムルングを外に出すことがメインなのだが、そのために彼女のもつイスラム系の憑依霊たちや、その他の霊たちに対する配慮も必要だった。最後に、最も厄介な憑依霊ドゥルマ人に対しては、ンゴマとは切り離して個別に説得、懐柔する必要があった。
私は今回はンゴマの舞台よりも、舞台裏での施術師の活動を中心に見ていたのだが、ンゴマ経験豊富な参加者たちで表舞台の方も大いに盛り上がっていた。それには主宰するムァインジさんの采配もおおいに関係していた。ムァインジさんは、舞台裏での作業がけっこう多かったのだが、例えば小屋の中での唱えごとの最中でも、外でンゴマの演奏が弱まったり、ストップしたりすると、いきなり大声で「太鼓、太鼓」と叫んだり、太鼓の音だけになって、歌声が途絶えたりすると「太鼓が落ちてるぞ」と叫んで歌を促したり、その臨機応変の采配で場を白けさせなかった。他のンゴマではしばしば見られた、次の曲を何にするかで演奏者たちが議論しあう、などという場面もなかった。ムァインジやアンザジが適宜、選曲を指示していた。ムニャジやムウェレの僚妻だったキジさんのような施術師が、助手として協力しているのも表舞台のンゴマが順調に運んだ一因だろう。
表舞台での最大の盛り上がりは明け方、憑依霊ドゥルマ人の演奏で起こった。ムウェレのメムァカ、ムニャジ、キジ、それと名前のわからないもう一人の女性が、同時にドゥルマ人に憑依された。全員、もともとドゥルマ人なんだが。憑依霊ドゥルマ人は、奥地の荒れ果てた土地に住んでいる超田舎者としてイメージされている。ンゴマにやってくる際には自分の住む荒れ果てた未開地(nyika)や山から、サボテンの木やミドリサンゴの木をなぎ倒しながら、はるばるやって来て、未だに木を彫って作ったお椀で練粥を食べ、野草の煮物をおかずにする。しかも無作法で、無礼者、礼儀知らずときている。ドゥルマ人の自己イメージとしては、卑下しているにもほどがある。
ドゥルマ人がいかに手に負えない憑依霊であるかは、彼らに「鍋」を提供する際などの唱えごと(一例)の中にも見て取れる。
ンゴマに憑依霊ドゥルマ人が登場し、お約束どおり木の椀で練粥を要求すると、主催する施術師や演奏者たちは「ごめんなさい。私たちのところディゴではお望みのものは手に入りません」などと受け答えしたりする。いやいや、ここはドゥルマでしょ、と突っ込みたくなるが、憑依霊ドゥルマ人が登場するときには、人々のいる場所はより洗練されたディゴ地域にシフトし、自分たちをディゴ人とみなして、異人ドゥルマ人に応答するのである。
というわけで、ドゥルマ人が登場すると、ンゴマは虚構性を加速し、一気にコミカルな様相を呈する。
この日は、4人も同時に登場したドゥルマ人が意気投合してしまい、お互いに無礼者ぶりを自慢し合ったり、持ち物を交換し合ったりしながら、実に嬉しそうに踊りまくり、周囲の見物客たちに無理難題をふっかけたりする。私も一人のドゥルマ人(キジさん)から、目のところにつけている鏡(メガネ)がメタメタ(metameta 日本語にするとギラギラ)して、お前は不細工だ(kuhama)、ちょっとよこせと言ってからまれた。今回は太鼓とウパツ76の音が大きすぎて、彼らのあいだでの会話は全く録音不可能であったが、こうしたやり取りの実際は、このあたりの掛け合いが、きちんと記録されている別のンゴマで、またの機会に紹介することにしたい。
今回の「外に出す」ンゴマの特筆すべき点は、最後の占い(mburuga)のテストにおいて、ムウェレの占いの能力が遺憾なく発揮されたことである。他のムルングで「外に出す」ケースでは、占いについては、まあ、当たったことにしておこうみたいな感じで終わることが結構あったのだが、メムァカはほぼ熟練占い師のようなパフォーマンスを見せた。喋り方まで、普通のときの控えめなドゥルマのおばさん喋りの口調とは打って変わって、まるで幼児のような舌足らずの口調で、かなり相談者の真相に迫る占いとなっている。彼女は、施術師になることをずっと拒んでいたというのだが、すでに若い頃から「気が狂って」いろいろな問題の真相を告げたり、これから起きることを予兆したりしていたというのだが、それも関係しているのかもしれない。
彼女が「外に出す」ンゴマを開くことに同意した理由が、彼女自身の病気というよりも、彼女の息子の病気(すでに大きくなったのに歩けるようにならない)であったというのも、このケースの特殊な点である。そのときの私の身も蓋もない予想では、このンゴマの後、突然歩けるようになることなど、とてもなさそうだったので、その場合が心配だった。このンゴマの後、メムァカさんとは会うことはなかったが、ムニャジ経由の話では、彼女は普通に施術師の仕事をしているようだった。ただ子供は相変わらず歩けないとのことだったが。
最後に、憑依霊の施術師の唱えごとについても一言、述べておきたい。唱えごとがかなり声を張り上げてなされているという事実である。ここではムァインジによる唱えごととアンザジによる唱えごとで、それぞれの唱えごとの冒頭部の音声データを示しておいた。このように声を張り上げて、はっきり聞き取れるようになされるという点は、同じ施術師でも妖術関係の施術師が行う唱えごとと大きな対照を見せる。後者の多くは、ほぼ口の中でもごもご言うだけで聞き取ることは不可能である。憑依霊の施術における唱えごとが大声でなされる理由は、けっしてンゴマのように大勢が集まっている前で、それらの聴衆に聞かせるためではない。ここでの事例のように、聴衆が一人もいない(私を勘定に入れると一人いることになるが)屋内での施術師夫婦のあいだでの唱えごとである。もちろんこれらの唱えごとは、憑依霊に対して語りかけるものになっている。
これはドゥルマの憑依霊の特徴の一つと関係している。つまり憑依霊たちは、人間を超えた力を持ち、人間にはアクセスできない情報を知っている強大な存在である。ところが彼らは、人間の社会についてはあまりよくわかっておらず、理解力に乏しい存在、聞き分けのない子どものような存在だとも考えられている。彼らを説得するには、大きな声ではっきりと聞き届けられるように、繰り返し繰り返し話してやらねばならない。手を変え品を変え説得せねばならない。好物を提供して懐柔せねばならない。こうした憑依霊の属性については、これからも徐々に触れていくことになるだろうが、憑依霊の施術師がはっきり聞き届けられるような大声で唱えごとするのも、いわば子どものような存在を相手に理を諭す必要があるからなのである(と私は思う)。
3478 (アンザジによるンゴマ開始の唱えごと)
Anzazi: ...ムルング子神1そしてカツィンバカジ子神39とあなたライカ38、そしてサンバラ人子神90。あなたムクァビ子神136、カルングジ子神137、そしてペポコマ子神138。 おだやかに、おだやかに。バラワ人子神139、バルーチ人子神140、アラブ人141、そしてブルサジ142とロハニ子神143。おだやかに、おだやかに。今日この日、私はンゴマを差し出します。このンゴマに招待されること(murongo144)を、皆さまはずいぶん以前にお求めになりました。もうやってこないのではないかとおっしゃるほど。でもついに今日、今、ンゴマへの招待はやってまいりました。皆さま方、お一人お一人ずつお行儀よくお着きになりますように。そして互いに譲り合いながら、幼子をとき解いてください。あなたライカよ、とき解いてください。あなたキツィンバカジよ、あなた方がお解きくださることを願います。サラマ、サラミーニ145!皆さま、お一人、お一人、とてもお行儀よく、平和的に、お着きになりますように。
私は遠くにいる、ウェー、帰りなさい 私は遠くにいる、ウェー、帰りなさい 帰りなさい、ウェー、帰りなさい 帰りなさい、ウェー、帰りなさい (何度も繰り返す)
おだやかに、おだやかに、ムルングよ、とき解(ほど)け。 おだやかに、おだやかに、ムルングよ、とき解け。 (何度も繰り返す)
(ムルングの歌3 song of mwanamulungu) (solo)
Mwanamulungu unauya vyoga ziya ムルング子神が帰ってくる、池に踏み込め chikala u kumbu, ukumbuke もしも思い出し、思い出して。 vyoga ziya 池に踏み込め mwanamulungu unauya vyoga ziya ムルング子神が帰ってくる、池に踏み込め chikala ukumbu, ukumbuke もしも思い出し、思い出して vyoga ziya 池に踏み込め
(合唱)
Mayee mwanangu Changa(女性の名前) ああ、我が子チャンガよ Vyoga ziya 池に踏み込め ra uganga 癒しの術の ra uganga 癒しの術の
3479 (ムァインジによるヤシ酒による戸口でのクハツァ114)
(背後にンゴマの太鼓と歌が聞こえる)Mwainzi: 下界の祖霊たち、上界のムルング。私たちは今、ンゴマをクハツァします。そうンゴマ、明日の夜明けまで、首尾上々に。そう、私たちはつつがなきことを願います。あなた祖父もごいっしょに、あなたの息子ンゴメもごいっしょに、あなたの息子ベニャレもごいっしょに、あなたの息子キティもごいっしょに。あなたの息子ムンボもごいっしょに。そしてニャワも最近そちらへ参りました。そしてあなたベムァレワご自身もごいっしょに。ベムァレワ、この屋敷全体はあなたのものです。 私たちはあの子供が治ってほしいのです。ンゴマが鳴っている、小屋のなかのカザマ(大きい瓢箪に入った酒)なら、これです。ほらどうです。皆さま方、お酒をお飲みください。それも機嫌よく。私がここでいたします事どもを、いっしょに護りましょう。いっしょにムルングに祈りましょう。この酒は癒しの術(uganga)の酒です。
(ムルングの歌4)
降りてきてください、降りてきてください、空を昇るムルングよ、降りてきてください 降りてきてください、降りてきてください、空を昇るムルングよ、降りてきてください (何度も繰り返す)
Mwainzi: 急いで、ムルング子神よ、急いで、ムルング子神よ。ンゴマはこれです!
(屋内だが外の太鼓の音が聞こえている)Mwainzi: ここ、この場所で私たちは今日チェレコ(chereko4)を差し出します。あ、チェレコじゃなくて、これはあなた全能のムルングの子供です。そしてあなた全能のムルングこそ、砦146の主です。(Anzaziに向かって「乳香を継ぎ足してよ」) さて、ここ、この場所に私ことムァインジが参りました。私ムァインジは癒しの術を盗んではおりません。私自身たくさんの困難に捕らえられたのです。私は、ムサンブェーニ147まで行って、白人に治療してもらいすらしました。私が申しますように、私は騙されておりました(それには何の効果もありませんでした)。家に帰って、じっとしておりました。じっとしておりましたが、困難は相変わらずでした。問題は私を捕らえ、私は、「あの白人たちのところに、お前は何のために行ったのだ」と言われました148。「おやなんと、たくさんの困難のためだったのかい」。
(カセットテープ交換)
Mwainzi: 私は、「癒しの術というのなら、私はそれを調えます」といいました。「そう、私はもうすぐに死んでもいいくらいです。この世界に、私は子供もおりません。」そう、私は同意いたしました。私が同意すると、問題は大人しくなりました。私には連れ合いもできました。私は言いました。さてさて、もう例の問題は過去のことだと。すると私はまた(問題に)戻ってこられ、したたかに捕らえられたのです。誰が見ても、私が、ええ(もう死ぬだろう)と、わかりました。そしてムルングが私を助けてくださりました。
3481
Mwainzi: ムルングとは、今日ここにいらっしゃるあなたです。今、ここにはとてつもない難儀に見舞われている子供がおります。今、(普通なら)この子供は少年になっていることでしょうよ。数々の占いで、それは彼の母親の(に憑いている)憑依霊のせいだと言われるのです。病院にも、(モンバサの)コースト・ジェネラル病院であれ、他の病院であれ。子供は戻ってきても、人に抱えあげてもらう。今日、この日も、抱えあげてもらっているのです。 なんと、私たちには(憑依霊に呼びかける)癒しの術(urongi149)が必要だというのです。この子供が全能のムルングの癒しの術(urongi)を手に入れられますように。あのメムァカさん、あの方です。今日、私は、(彼女に)こうして癒しの術を差し出します。 私は癒しの術を量り売りで買った訳ではありません。私を捕らえた(憑依霊が引き起こした)困難によってなのです。この私ムァインジは。今、今日、もしあの子供が本当に(憑依霊が引き起こした)困難なのでしたら、彼のあの母が占いを打つ子供(瓢箪子供のこと)を手に入れたら、子供は健全になる。2日(歩き回った)後に、私に、あの子は小学校に入ったよと告げられることを、私は望みます。私に、なるほど全能のムルングは本当に(人を)捕らえるんだと、教えて下さい。そしてその子が、仲間の子どもたちといっしょになれるように。でも主はあなたなのです。そして私たちは今日あなたに仕事を差し上げます。 とき解いてください。サラマ、サラミーニ。 鶏はこれです。黒い鶏です。この鶏はここで屠られます。そしてその心臓がこの(瓢箪子供の)なかに入れられます。もしあなたがムルング子神であるなら、私は上首尾であることを望みます。
3482
Mwainzi: 男性の施術師は私です。女性の施術師は彼女です。誰もがそれぞれの困難に捕らえられたのです。彼女は、彼女の実家で問題をもちました。私は私たちの屋敷で、問題を持ちました。ムルングが私たちを一緒にしてくれました。なんと、それぞれにそれぞれの困難がありました。そして今、私はそれがここで始まるとは申しません。それはずっと以前に始まりました。そしてこのようにすることで、人は治ります。今、もしこの争いごとが、あなたムルング子神のせいであるなら、あなたがメムァカのために癒しの術を望んでおられるのなら、あの子供をお治し(uphoze150)ください。今日、あなたは癒しの術を与えられます。とき解いてください。サラマ、サラミーニ。 私の存じ上げている祖霊たちも、私の存じ上げていない祖霊たちも、皆さん全員一緒にお立ちになり、私が行います事どもに力をお貸しください。私が申し上げているこれらの言葉に。 [アンザジによる瓢箪子供に対する唱えごと] Anzazi: あなたライカ子神、サンバラ人子神、そしてバラワ人子神、ムクァビ子神、カルングジ子神、そしてペポコマ子神。ンギンドゥの女(muchetu wa chingindo153)。おだやかに、おだやかに。私たちはここで歌を差し出します。その歌とはあなたムルング子神の歌です。あなたムルング子神、訴えごとがあって来られました。あなたムルング子神は癒しの術(ウロンギ149)を探し求めているとおっしゃる。ついには幼な児(chidunduruma154)に病気を注ぎ込まれた。あなたムルング子神が癒しの術がほしいから。
3483
Anzazi: ずっと以前より癒しの術を乞いながら、あなたムルング子神よ、癒しの術を与えられずに来た。 ところで、今日のこの日、あなたムルング子神よ。あの幼な児が、あんな具合で歩かない。地面を這うだけ。あなたムルング子神と、サンバラ人子神、カツィンバカジ子神、そしてライカ子神のせいだと言われています。あなたが癒しの術が欲しい、それが最大の諍い、それだけ。 今、今日、あなたにお与えする癒しの術はこれです。それを差し出すのは誰でしょうか、あなたムルング子神よ。それはムァインジが差し出します。癒しの術を差し出すのは誰でしょうか。それはアンザジが差し出します。ムァインジはその父と母(施術上の)によって出されました。私もまた父と母によって出されました。ヴィグルンガーニ(Vigurungani155)にいる母はメムンガです。あちらマズマルメ(Mazumalume156)の母は、ニムィンゴです。お父さんはベチェカヤです。各々がその父と母をもっています。癒しの術を盗んだ者はおりません。癒しの術を量り売りで買った者もおりません。困難が私たちを捕まえ、この癒しの術が出されたのです。そして私たちも、友たちを治療したいのです。私たちが友たちをこんな風に治療(huchitibu152)すれば、私たちが彼らを治療(huchilagula151)すれば、彼らも治りますように。 さてメムァカです。彼女がムルングの子供の仕事(kazi ya mwana wa mulungu)を上手につかまんことを。
3484
Anzazi: あの幼な児をとき解いて、健全にならせてください。その脚を折り壊し、腕を折り壊すこともなし、あの子供、幼な児の。あなたムルング子神とサンバラ人子神、バラワ人子神、カルングジ子神、そしてペポコマ子神。あなたアラブ人とバルーチ人子神もご一緒に。そしてロハニ子神も。皆さま、癒しの術(urongi)をお受け取りください、どうか。癒しの仕事をなさってください。 癒しの術を与えられたのに、家の中でじっとしているのは、なしです、ムルング子神よ。だめです。あんな風に泣いて乞うておられたのは、昨日、一昨日のことです(すでに過ぎたことです)。あなたは「私は癒しの術を手に入れられないだろう」とおっしゃっていた。今日、癒しの術です、これです。しっかりと上手にお受け取りください、あなたムルング子神。あの子供、幼な児をとき解いて、健康にしてください。あの児が良き涼しき風に打たれますように。脚がしっかり固まり、あの幼な児が歩きますように。あの児こそが、ゆくゆくは彼の母のムコバ(mukoba61)を携行する者。これこそ彼女が望むこと。彼女が自分の弟子(mwanamadzi79)を求め、その結果、弟子が彼女の後ろを歩いてゆく。それはいったい誰でしょう?あの幼な児なのです。
3485
Anzazi: さて、この児をどうかとき解いてください。どうかこの児を外に出してください(これは字義通りに外で元気に遊べるようにして欲しいという意味)。この児の腕を折り壊すことは、なし。腹を壊すことは、なし。 どうかあの仕事の子供(瓢箪子供のこと)をこの場に、お吐き出しください。(この瓢箪子供が)よい冷気に打たれますように。悪い冷気は上空を通り過ぎますように。ニャリ(nyari56)の皆さま全員、デナ・ムカンベ(dena mukambe157)の皆さま、マサイ様(bwana masai100)の皆さま全員、皆さま方に発した諍いは、なしです。どうかお受け取りください。子供(瓢箪子供)は、この子です。ペポコマ(p'ep'o k'oma138)の皆さまがた、どうかお受け取りください。子供(瓢箪子供)は、この子です。争いごとは、なし。プンガヘワ(pungahewa158)の皆さま全員、キユガアガンガ(chiyuga aganga104)、ボコ・ムサウェ(boko musawe159)、おだやかに、おだやかに、友たちよ。 争い合うものは二人。三人目がやってくると、その者は争いを仲裁します。私どもは、皆さま方の仲裁者です。私どもは皆さま方に、皆さま方の喜びと癒しの術(urongi)の子供を差し上げに参りました。皆さま方どうか、仕事をなさってください。つつがなきこと、これこそ私どもが欲していることです。 皆さまどうかとき解きください。サラマ、サラミーニ。世界の住人の皆さま、穏やかに。
3486 [ムァインジによる、完成した瓢箪子供についての唱えごと]
Mwainzi: ごめんください、ごめんください、全能のムルングよ。全能のムルングこそ砦の主です。生まれ出たる者にして、ムルングのいない者などおりません。私はあなた全能のムルングをお迎えいたします。 そしてメムァカという女性。メムァカは子供を産みました。でも今、その子供は歩きません。この子が今日、歩くとしましょう。明日には子供はまた寝具の中に後戻り。多くの事がなされました。私の友人の治療者たちもここにやって来ました、あなた全能のムルングよ、やって来て治療いたしました。子供は歩きませんでした。占いに戻ると、対処に間違いがあったと言われたのです。全能のムルングに戻りなさいと。 こうして今日、私たちはあなた全能のムルングを手にしています。今日この日より、こうして、あなた全能のムルング、今、あなたは子供(瓢箪子供)です。仕事をするための。私はあなたを今日、この日に、メムァカに与えます。今から、私はあなたを私の(選んだ)場所に置きに行きます。メムァカが自分で行ってあなたを持ち帰るように。メムァカがたしかに子供(瓢箪子供)をつかんだと私に教えて下さい。なぜなら彼女は子供を欲しているからです。
3487
Mwainzi: あの幼な児もまた、治りますように。なぜならその子の病気はすべて、その母が癒しの術を授けられていないからだと言われているのです。だから、彼女に癒しの術が与えられれば、子供もまた歩きます。私たちが私たちの事柄を試しにやって来て、帰りました。そして私たちは鍋を据えに参りました。 (唱えごと中断) Anzazi: あなた急いでね。明るくなってしまうわ、あなた。 Mwainzi: ああ、(明るくなってもンゴマは)それでも打てるよ。 A: この子供(瓢箪子供)を置きに行くこと(隠しに行くこと)の話よ。 Mw: お前と、この人、あなたがた二人でお行きなさい。もうかねてから、私はあなたとこの人に行ってもらう計画でした。私は行きませんよ。 (唱えごと再開) Mw: さてあなた全能のムルング、こうして今日この子供(瓢箪子供)はメムァカの子供です。そしてムルングの太鼓が鳴れば、メムァカは自分の子供を取りに行かねばなりません。そう、さらにあの子供(病気の)も歩きますように望みます。なぜなら憑依霊ドゥルマ人の鍋を置きに来たところ、子供が歩いたからです。私も、その子が車(おもちゃの)を押しているのを見たほどです。先日私が、再度鍋を置きに参ったところ、聞いたところによると、その子は歩き、丘の下までたどり着いたそうです。でも昨日、私が来ると、病気が舞い戻り、子供は抱え起こされました(自力では立てないということ)。 あなた全能のムルング、憑依霊アラブ人も、バラワ人子神も、サンバラ人子神もごいっしょに。
3488
Mwainzi: そしてあなたサンバラ人子神、あなたこそ偉大なる施術師。すり減った鍬の刃の人、噛みタバコを耕作する人。キティティ(chititi123)を手に取り、激しく打ち鳴らす(占いをする)。それを今日この日に、とき解きください。メムァカがこのあと、この彼女の子供を見つけますように。 クァビ人子神、カツィンバカジ子神、ライカ子神もご一緒に。ドエ人(mudoe160)も、バルーチ人子神も、あなたムァンガラ(mwangala161?)も、ご一緒に。とき解きください。それから、誰でしょう。あなたドゥングマレ(dungumale162)とあなたジム(zimu171)もご一緒に。それとあなたキロボト(chiroboto172)も。皆さま方、どうかとき解きください。 この子供(瓢箪子供)を今日、私はメムァカに与えます。でも、私がそれを取ってきて、彼女に渡すために、(ムルングの紺色の布を)私がそれにかぶせるなんてしたくない174。もし皆さま方がメムァカのために癒しの術(urongi)をお望みでしたら、(これまでの他の)施術師仲間たちはやっては来たものの、対処を間違っていたのです175。私ムァインジもやって参りましたが、私自身は癒しの術を量り売りで手に入れたりはいたしませんでした。癒しの術は全能のムルングによって与えられました。そして私は全能のムルングの業を同じくなすだけのことです。私はメムァカが立ち上がり、自分で自分の子供を取ってくることを望みます。彼女に癒しの術を、私に与えさせてください。
3489
Mwainzi: 私もここで、この子供(瓢箪子供)のために泣いてあげます。そして私があなたをあっちに置いたら、あなたはすぐに泣いてください。あなたのお母さんがやって来てあなたを取ってくるように。そう、私に彼女に癒しの術を与えさせてください。そして人々にも、ムァインジはまだ若輩者176だが、本当に困難に見舞われていた(そしてそれによって癒しの術を手に入れた)のだとわかるように。私の相棒はこの者(アンザジのこと)です。この子供は、男と女(の施術師)の子供です。しっかりとき解いてください、あなたムァニィカ子神(Mwanyika177?)、あなたキリマンジャロ子神(chirimanjaro180)、皆さま方、どうかとき解きください。子供(瓢箪子供)はあなた方の子供です。 他の(憑依霊の)皆さますべてもいらっしゃいます。仕事を欲しがっておられます。しかしながら、あなた全能のムルングが与えられるまで、彼らはあなたを追い越しません。今日、私はあなたに差し上げます。ですから、あの子供(メムァカの病気の子供)をとき解いて、その子が歩くように。そして私もまた喜ばせてください。なぜなら、あの子供(瓢箪子供)が取ってこられさえすれば、この子(病気の子供)も歩くようになると私にはわかっているからです。子供(瓢箪子供)とは、他でもない、あなたです。置き去りにされた場所で、もし(見つけられるのが)遅れているとお思いになったら、あなたはただ泣けばいいです。あなたのお母さんがやって来て、あなたを連れてきてくれるでしょう。 どうか皆さま、とき解きください。サラマ、サラミーニ。世界の住人の皆さま、全員で。
[ムァインジの唱えごと終了]
Anzazi: さあ、さて。とき解くこと。とき解きください、あなたムルング子神。ムルング子神、あなたには乞い願うことがおありでした。乞い願うこととは何でしょう。癒しの術(urongi)を求めていらっしゃったのです。
3490
(アンザジの唱えごと、冒頭部)Anzazi: さて、癒しの術(urongi)は他でもありません。癒しの術はこれです。あなたが、ずっと以前からお求めになっていた、その癒しの術です。サンバラ人子神とご一緒に。サンバラ子神こそ偉大な施術師です。そしてあなた憑依霊クァビ人。あなた方は偉大な施術師の皆様です。皆さまは、風が私どものところにやってくるのをお示しになり、人に夢を見させ、戦争がやってくるとお告げになります。しかじかの日に戦いがやってくると。人はすでに知る者となります。自分たちにできるやり方で備えます。なんと、池を掘る、街道に小さな池をたくさん堀り作るのです。 さて、あなたムルング子神と、あなたキツィンバカジ、ライカ子神とサンバラ人子神、バラワ人子神、カルングジ子神、ペポコマ子神。この子供(瓢箪子供)はあなた方の癒しの術の子供です。今こうして私はあのメムァカにこの子を与えます。幼な児が病気で、仕事を欲しがっておられるあなたムルング子神のせいであると言われているからです。人々(憑依霊)は大勢います。しかしながら私たちは全能のムルングから始めます。彼女に子供(瓢箪子供)を差し上げることから始めさせてください。それが済んだら、私たちはデナ・ムカンベ(dena mukambe157)の子供を差し出しに参るでしょう。
3491
Anzazi: そしてそれが済んだら、私たちはディゴの女性(muchet'u wa chidigo130)とマレラ(marera182)子神の子供(瓢箪子供)を差し出しに参ります。あなたシェラ(shera57)の女。一緒にいるのは誰でしょう。カルメ・ムドゥルマ子神(kalume muduruma30)。彼らもまた仕事を求めている方々(憑依霊)です。でも今は、あなた方皆さま全員の母親(であるムルング)のこの子供(瓢箪子供)を、お受け取りになることからお始めください。皆さま、あれなる砦(メムァカのこと)の内にお住まいの世界の住人子神の皆さま。皆さま、あれなる人の幼な児をとき解き、健康になるように。あなたムルング子神、私はあなたに平安の長声(njerenjere184)をお打ちいたします。 「おやおや、私たちも仕事をするための、私たち自身の幼子(瓢箪子供)を貰えるんじゃなかったのか」(とおっしゃるかもしれませんが)、皆さま、友よ、これが仕事です。もう始まっています。「私たちも仕事が欲しい、私たちも仕事が欲しい」(によって引き起こされた)家(患者の身体)のなかの、こうした病の数々が、外に出てしまいますように。あの幼な児、子供(病気の)が健康になりますように。良き冷風に打たれますように。悪い冷風は上空を通り過ぎますように。子供は食事を食べ、太るもの。子どもの脚が折れ壊れることも、腕が折れ壊れることも、脇腹が潰されることも、なしです。なしです。あなたムルング子神。あの諍いは一昨日、昨日のことです(過ぎたことです)。
3492
Anzazi: でも、今、今日は、奴隷なる子供(メムァカの病気の子供)を解放し、良き冷風に打たせてください。争いはございません。サラマ、サラミーニ。 皆さま方、世界の住人子神の方々全員。おだやかに。あなたニャリ・キピンデ(nyari chipinde185)もご一緒に、お静まりください。ニャリ・ンゴンベ(nyari ng'ombe186、ニャリ・ムァフィラ(nyari mwafira187)、あなたニャリ・ムァルカーノ(nyari mwalukano188)、ニャリ・マウンバ(nyari maumba189、ニャリ・キティーヨ(nyari chitiyo190)。ニャリ、壊し壊す者、頭を壊し、腕を壊し、胸を壊し、脇腹を壊す、あなたニャリ。ブワナ・マサイもご一緒に。それと、あなたが脚を壊すと、子供は歩かなくなる。なんとあなた、ニャリ・ジョカ・ボム(nyari joka bomu192)のせいだったのですね。 どうかあの奴隷なる子供を吐き出して、あなたがたの子供(瓢箪子供)をしっかりとお受け取りください。長声とともに。長声を打ち、子供をとき解き、健康にしてください。子供が良き冷風に打たれますように。悪しき冷風は上空を通り過ぎますように。争いはございません。もし子供(瓢箪子供が欲しいということ)であったのなら、これが癒しの術の子供です。どうか平安とともに仕事をしっかりなさってください。「おやおや、私たちは知っている。仕事を与えられるってことを。ずっと以前から仕事を乞い願っていた。私たちが仕事を手に入れることはないだろうと言っていたものだ。でも今日、今、私たちは仕事を手に入れた。」
3493
Anzazi: プンガヘワ子神158、ルキ105とガザ194、キユガアガンガ104、ボコ・ムサウェ159もご一緒に。しっかりお静まりください。どうか あなたがたの癒しの術の幼子(瓢箪子供のこと)をお受け取りください。この子です。サラマ、サラミーニ。 [アンザジの唱えごと終了]
Mwainzi: この子はここにはもう置かれることはありません。 Hamamoto: 二人で行かなければならないのですか。 Mw: ふたりです。 H: 隠しに行く? Mw: 隠しに行きます。さあ、私の仕事は終わりました。あとは太鼓を打ちに行きます。打ちに行きますか。私は、マサイ人がいいな。私は太鼓を打ちたい。さて、ここでお話しますが、ここでお話するのは、私たちはここにメムァカについてお話しようとやって来たわけで。さあ、太鼓、太鼓!
3494 [ムァインジ黒い鶏で草木をクハツァ]
Mwainzi: 子供は病気でマカダラ(makadara196)にまで参りました。マカダラでも駄目でした。ドゥルマのやり方に戻りなさいと言われたのです。そうすれば子供は治るでしょうと。メムァカに私は申しませんでした。...(聞き取れない)...一つの心をもって。憑依霊アラブ人、バラワ人子神、クァビ人子神、そしてキツィンバカジ子神、ライカ子神、カルングジ子神。カルングジ子神、またの名をムァンガラ(mwangala?)、そして憑依霊ガラ人。そしてペポコマ子神。どうか、とき解きください。 今日、この草木を私はメムァカのためにクハツァ114します。一つの心をもって。困難といえば、私も自分自身の困難に捕らえられました。そして私も(外に)出され、仲間の人々を救いなさいと言われました。救うとは他でもありません。あなたムルング子神。私はこのメムァカを救います。彼女の子供が歩けるようにと、そして(メムァカの)仕事が明るく輝くようにと。子供が治り、そして(メムァカ)自身が歩く機会を得ると、さあ、この子供が来て、彼女とともに歩まんことを。いっしょに癒しの仕事に行くことを。
3495
Mwainzi: あなた全能のムルングと、ご一緒のドゥングマレ(dungumale162)、ペポコマ(p'ep'o k'oma138)、キロボト(chiroboto172)もご一緒に。しっかりとき解くこと、憑依霊ディゴ人もご一緒に。しっかりとき解くこと、あなたムァニィカ子神177もご一緒に。あなたキリマンジャロ子神197もご一緒に。 私は少し喋りすぎました。ごめんなさい。私はここにやってまいりました。私ムァインジは。私は癒しの術を盗んではおりません。癒しの術はンガニャワさんから与えられました。さらにムンボさんから与えられました。さらにニャレさんから与えられました。そしてムベガさんから与えられました。そして私も仲間を救います。 しっかりお静まりください。カニィニィ子神(kanyinyi198ここでは草木ムリンダジヤ(murindaziya)の別名。しかしここでの語りは草木に対してであると同時にムルング子神に対しての語りにもなっている)。日照りにも萎れず、雨にも萎れない。今日、今、私はあなたがこの者とその子供に、つつがなきことをとき解いてくださることを願います。彼女の子供が歩きますように。もしこの争いごとがあなたのせいだった(あなたが癒しの仕事を臨んでいたせいだった)のなら、私はあなたカニィニィ子神のこの場所に参りました。私は癒しの仕事を盗みも、量り売りで手に入れもしませんでした。本当は、私は癒しの術を臨んでいなかったのです。私はムルングに打ち負かされたのです。 [ムァインジのクハツァ、終了]
3496 [アンザジ、黒鶏で草木をクハツァ]
Anzazi: あなたカニィニィ子神、私たちはあなたをそちらにいるメムァカに与えます。メムァカはずっと以前から、癒しの術を乞われておりました。幼な児が病気で小屋の中から出ることがないのです。そのメムァカですが、今日、今、あなたカニィニィ子神の仕事が今日です。 さて私はあなたムルングの草木に語ります。あなたこそ偉大なるムルングです。私はあなたにここで語ります。私は癒しの術を盗んではおりません。癒しの術は、(施術上の)ウマジ・ワ・ビンドゥ母さんから頂きました。私は次に誰から癒しの術を頂いただいたでしょうか?(施術上の)ムァインジ父さんから頂きました。そしてさらに誰から癒しの術を頂いたでしょうか?(施術上の)ベチャカヤ父さんからです。癒しの術を誰から頂いたでしょうか。(施術上の)メムィンゴ母さんから頂きました。私はあなたムルング子神とサンバラ人子神の癒しの術を盗みませんでした。そしてバラワ人子神とクァビ人子神、カルングジ子神、ペポコマ子神、ドゥングマレ子神、ジム子神171。どうか皆さんの癒しの術(urongi)をしっかりとつかんでください。あの子供(病気の)が大雨季に耕作しますように。昼に夜に彼の仕事を解き解いてください。
3497
Anzazi: ムコバ(mukoba61)は外を歩くものです。ムコバは家の中を歩いたりしません。今は、お聴きください、あなたカニィニィ子神。日照りにも萎れず、雨にも萎れない。あなたカニィニィ子神、私はつつがなきことを望みます。メムァカがその子供ともども、健康でありますように、そして彼女の仕事を順調に握りますように。サラマ、サラミーニ。世界の住人の皆さま。おだやかに、キリマンジャロの方々、憑依霊ガラ人の方々、皆さまおだやかに。 [アンザジのクハツァ終了] [ムァインジによる白い鶏での草木のクハツァ] Mwainzi: あなた憑依霊アラブ人、バルーチ人そしてロハニ子神とご一緒に。そして誰とご一緒でしょう。ソマリ人子神とです。そして誰とご一緒でしょう。皆さま方イスラムの憑依霊の方々です。世界導師(mwalimu dunia22)、コーラン導師(mwalimu kuruani199)、カドゥメ(kadume165)、ツォヴャ(tsovya170)。皆さま方全員、ムルングの鍋を据えますと、その病人は、皆さま方とも、世界の住人の子神皆さまとも関係があったのでしょうか、皆さま方こそ、そこにお出でになった方々なのです。それは結構なことです。つまり、あなた方があの、あなた方の母(ムルングのこと)とご一緒で上機嫌であられるなら。 今日、私はメムァカのためにクハツァいたします。メムァカは、その子供が病気です、歩けないほどです。そしてメムァカは自分からここ(最重要な草木のある場所)にやってまいりました。「さあ、行きましょう。私が教えてあげます」などと私は申しませんでした。
3498
Mwainzi: 彼女は自分でやって来て、あなたカニィニィ子神を握ったのです。日照りにも萎れず、雨にも萎れない。 さて、子供をとき解いてください。サラマ、サラミーニ。私は今メムァカの子供が、彼女自身ともども、治ることを願います。彼女の子供が治り、彼女の癒しの術が輝きますように。サラマ、サラミーニ。 [ムァインジのクハツァ終了] [ムァインジ、ヤシ酒で祖霊にクハツァ] Mwainzi: 私の存じ上げている祖霊の方々よ。私の存じ上げていない祖霊の方々よ。私はあなたムァインジお祖父さんとお話いたします。あなたムァインジお祖父さん、そして私が幼い頃に死んだお父さん、お父さんは結婚し、たくさんの子供をお生みになりました。私はちょうど真ん中の子供です。 さて、今日、ムァインジお祖父さんとその兄弟、ベムァレワさん、私は今日、ここでメムァカに草木を握らせました。彼女はあなた方の妻(分類上の)ですね。私は彼女にカニィニィ子神の草木を握らせました。 (演奏が途切れたので演奏者に向かって)太鼓! 私はあの子供が治るように望みます。私は、彼女本人もつつがなく、彼女の仕事が光り輝くことを望みます。酒はこれです。私は言われました。今、酒はこれです。酒を飲む方たちはお握りください。そしてここで話されることを両手をもってお受け取りください。
3499
Mwainzi: さて、私はあなたカニィニィ子神にお話いたします。あなたカニィニィ子神、あなたの草木は日照りにも萎れず、雨にも萎れない。今日、私はあなたをメムァカに与えます、あなたカニィニィ子神よ。一つの心をもって。私はンガニャワお父さん(施術上の)に言われました。「私はお前に癒しの術を与えましょう、我が子供よ。癒しの術は、けっして怒りの心で行なってはいけないよ。」と。私は彼の言葉をしっかり握りました。こうして今私はあなたカニィニィ子神を握っております。私は癒しの術をンガニャワによって与えられました。彼こそお父さんです、あなたカニィニィ子神よ。その後、私はランギ父さんとともに進み、ムロイ(muroi200)をニャレとミンベッガによって与えられました。ンガニャワ父さんは、ムヮカとともに私を外に出しました。彼は私に(他の)草木を見せませんでした。彼が見せたのは、あなたカニィニィ子神、日照りにも萎れず、雨にも萎れない。今日、今、私はあなたにメムァカを「嗅ぎ出し」いたしました。一つの心をもって。メムァカ、彼女の子供が治りますように、もしあの子供が歩くことをしないのが、憑依霊たちのせいだというのなら。今日、彼女が彼女自身でやって来てこの草木(カニィニィ)を握ったように、私はあなた全能のムルング(カニィニィ)を欲しております。私はあの彼女の子供が治ることを望みます。そして彼女自身が、人を癒やすよう願います。
3500
Mwainzi: 私たちはまず、この者(黒ヤギ)を食べます。私は満腹で出発したいのです。彼女(メムァカ)も満腹して来る。でも、もし私が空きっ腹のまま立ち去ったら、彼女も空きっ腹に陥ります。あなたカニィニィ子神、私はあなたを盗んではおりません。あなたカニィニィ子神、どうかムァモンゴの一族の祖霊全員、ミキシマの一族の祖霊全員とともに、平安にとき解きください。それからウェキジの一族の祖霊の皆さまも。 さあ、今名前を挙げた皆さま、どうかこの酒にご参加ください。あなた方の子孫たちも、あなた方の祖先たちも、ごいっしょに酒をお飲みください。私の心は一つです。癒しの術(uganga)を首尾よく差し出すことです。人は自分で失敗してしまうことがあります。人々が、ムァインジいったい何ごとですか、などと言うことがありませんように。この酒を、さあ。とき解きください。メムァカの子供をおとき解きください、健康になりますように。そしてメムァカ本人も、癒しの術(urongi)を切望いたしておりました。癒しの術を、本日、彼女に与えました。そして私の心はひとつです。 [ムァインジによるヤシ酒のクハツァ、終了]
3501 [ムァインジ、黒山羊でクハツァ]
Mwainzi: あなたは偉大なムルング、そして今日、今、私はあなたにこのメムァカをクハツァします。メムァカ、彼女の子供の問題をかかえています。その子は多くの癒やし手によって治療されてきました。それらの癒やし手は打ち負かされ、私のような若輩が呼ばれたのです。そう、私は無駄に白髪ですが、若輩です。私は困難に捕らえられました。私の言葉(唾液)を、あなたカニィニィ子神。日照りに萎れず、雨に萎れない。私は望みます。あの子供、すべての問題が。あなたは、メムァカがあなたを毎日採りにくるのを望んでおられました。今日、私はあなたをメムァカにクハツァいたしました。メムァカがここに毎日あなたを採りにやって来て、治療に盛んに出かけますように。あなた、カニィニィ子神、さあ、黒いヤギはこれです。今、私は平安を欲しています。サラマ、サラミーニ。 クァビ人子神(mwana kpwaphi136)とライカ子神と、ガラ人子神とご一緒に。友よ、お鎮まりください。あなた方こそは、全能のムルングとともに先をお進みになる方々です。ペポコマとドゥングマレとジムもご一緒に。そしてムァンガラ(mwangala161)お静まりください、ンギンドゥ人(mundingu153)もご一緒にお静まりください。
3502
Mwainzi: どうかとき解きください、友よ。ドエ人もご一緒に、お静まりください。ヤギはこれです。あなたムァニィカ子神(mwanyika177)、そう、あなたは偉大なムルングです。お静まりください。ヤギはこれです。どうかお怒りにならずに、あなた方のヤギをお受け取りください。私は彼女をつつがなくあちらへ出しました。だから皆さま彼女に癒しの術(urongi)をお与えください。彼女が昼に夜に癒しの術を行えますように。 あなたカニィニィ子神はおっしゃいました。「私はメムァカが毎日、やって来て私を採っていくようにと望んでいる」と。私は、そう、今日こうしてあなたにメムァカを与えました。そう、一つの心で。一つの心であなたに与えました。さらにあなたにヤギもお与えしました。メムァカがここにやって来ても、どうか彼女を驚かせたりなさらぬよう、お心得ください。彼女が家を出て、あなたを採りにやって来たら、そこに何者かが立ちはだかっているのを見る。そんなのは嫌です。私はあなたをクハツァし、彼女は自分からここに参りました。私は彼女に、さあ、行きましょうとは言いませんでした。彼女は自分でここに到達しました。あなたご自身も御納得でしょう。この者があなたのお言葉に同意したということに。あなたを採りにやってくるなら、家にいるあの子供も健康になるべしと。
3503
Mwainzi: 黒いヤギでしたら、そう、これです。とき解いて、キリマンジャロ子神。私の最後の草木はこれです。あなた全能のムルング、あなたが示された道筋、あなたが問題にされていた事柄は以上です。どうか今度はイスラム系の霊にやってこさせてください。男の施術師は私。女性はあちらの方です。それぞれがそれぞれの困難や問題を経てまいりました。今日こうしてあなたはメムァカに採っていかれます。どうかメムァカを煩わすのは終わりにしてください、そして彼女の子供が歩くようになりますよう。 (メムァカに向かって) Mw: 枝を一本折りなさいよ。 [黒いヤギをここで屠殺して、終了。この後、屋敷に戻るまで他の草木で黒鶏と白鶏によるクハツァが繰り返される。]
3504 [メムァカによる占い試験]
Mwainzi(Mw): 太鼓が落ちてるぞ、太鼓が落ちてるぞ(ngoma yidzegbwa. 太鼓だけが演奏されていて、人々の歌声が止まっていること)。こいつ(キティティ123)を打って、病人を見つけなさい。もし見つかった病人がたくさんだったら、私に言って。私は愚かな子供(施術上の)は嫌いです。私は聡明な子供が好きだ。最初に、あいつに(占いの見立てを)話しなさい。そいつを立たせて、こっちに連れてきなさい。そしたらこの人(メムァカ)が彼に話してくれるでしょう。先に彼女が見つけた者(病人)も、行って連れてきて。太鼓を少し止めて。彼女が話して、人々が聞こえるように。この人を救いなさい。言いたいことがある者たち(憑依霊)は、ほっておいて、問題を抱えたまま立ち去らせなさい。さあ、どうしてできないんだい?ほらウシ(ng'ombe201 =占いへの支払いの硬貨)はすでに、この人によって置かれているよ。 Memwaka(Me): (突然舌足らずな喋り方で)私が見るところ、この人は病気、病気だね。この人、私にゃわからないけど、この人、この人、何に苦しめられてる?問題に苦しめられている。別の問題にね。彼の身体の中のことは、そう。わからないけど、彼は出歩く。こんな風に歩き回る(日常生活は普通に営める)。でも何もかもうまく行かないのよ(文字通りには明るくはならない)。 Mw: さあ、ちゃんと返事しなさいよ。私の子供(施術上の) Man: タイレ(そのとおり)。 (人々笑い) Mw: もうタイレだよ、この人。 Me: 私に見えるのは、彼が出歩き、歩き回っているのは、お金稼ぎだね。そう、まったくうまくいかない。なにかする、なにかしても、往々にして家にこもってばかり。私にはそんなふうに見えるね。
3505
Mwainzi(Mw): タイレって言えよ。 Man: 何も手に入らないんだよ。そして家に入っても、私は拒まれる。 (人々大笑い) Mw: 家に帰るのも問題ってか? (人々笑い、言葉交わし合う) Memwaka(Me): 歩き回って、あちこち回って、その挙げ句、家に戻る。彼はただただ驚いている。もうどうしようもない(何もできることがない)。 Mw: タイレだよ、我が子よ。 (人々各々コメントしあう) Man: もうそう言ってるよ。まさにタイレですよ。 Me: おまけに、彼の妻も、私の見るところ、屋敷にはいないね。とっくに立ち去っている、そして何が彼女を追い出したのか、お前はそれを知っているかい? Man: 知りません。私は彼女が立ち去ったのがわかっただけです。 Me: そう、立ち去り、立ち去りしただけ。さて、そう、あんた自身だよ。駄目にされたのは。ところで、そう、あいつら(妖術使いたち)は、うう。 Man: 私はその破壊工作について、説明してほしいです。 (メムァカ、キティティ123を振る) Man: それをした者が、もしここにいるなら、その小枝でそいつを打ってください。
3506
Memwaka: ああ、今日このごろでは、人は名指しされないんだよ。 Man: ああ、そいつがどんな服をきているかだけでも言ってくださいよ。そうしたら誰かわかりますから。 Memwaka: あんた、専門家(妖術の施術師)を探してきなさいな。お前の身体をしっかり調えておもらい。だって、大したことじゃないんだから、友よ。それだけのこと。あんた、私の見るところ、あんたの身体もずいぶん壊されてるね、健康がすっかりなくなってる。おまけにどこに行っても、何も手に入らないね、あんた。 Man: いったいどうしたらいいんだ?ところで、その(妖術に対する)施術だけど、どんな風にするんだい?媒介物(chiryangona202)として何を用意すればいい? Me: 黒いヒヨコ(kiiru = kadzanakuku kiiru96)を見つけておいで。雌のね。それだけ。 (ムァインジに向かって)この男はしっかりクブェンドゥラ(妖術返し203)してもらわないと。ヒヨコは(殺さず)彼と一緒に暮らす。きっと彼は(その結果が)とても気にいるだろうよ。でも、そうしなければ、ああ、こいつはこれからもあちこち彷徨い、彷徨い回るだけ。あそこに留まったかと思えば、あちらに戻るといった具合。こいつが明るくなることは(事態が好転することは)ない、まったくない。あんた、私の友人よ、この男はしっかりクブェンドゥラされないとね、あんた。 (男に向かって)施術師と黒いヒヨコを探して。でも、あんたもし今のままだと、そう、あんたはこれからも、もがき苦しみ続けるだろうよ。何もかもうまくいかないだろうよ。
3507
Man: 私の妻は戻ってくるだろうか? Memwaka(Me): そりゃあ、あんたがちゃんとちゃんと(施術を)してもらったら、あんたが彼女を連れ戻しに行ったら、彼女はやってくるさ。でもこの処置を受けなかったら、あんた、これからも、もがき苦しむだろうよ。お前自身が壊されたんだよ。自分でどう思う? Man: それをやってもらわないうちは、私はもう妻を娶れない、そうなのか? Me: お前の(立ち去った)妻を連れ戻しに行けば、そうすれば、一緒に暮らすことになる。もし彼女のことが嫌いで嫌いでしかたないなら、別の女性を探すことになる。それはあんたの勝手だろうよ。あんた、私はあんたの身体を調えてもらうよう言っただろう。そうすれば物事は順調になる。でもそうしなければ、さあ、お前は混乱し続けるだろうよ。 Mwainzi(Mw): 仕事も、こいつが探せば、手に入るでしょうか。 Me: はい、手に入れられるとも。そもそも彼がちゃんと調えてもらえば、彼が仕事を求めて行ったら、もうみだりにそこを去ることはない。家に戻ってきては、また仕事に行く、その繰り返し。 Man: さあ、それこそ私が望んでいることです。それだけじゃなく、たくさんの妻、妻の群れ。
3508
Mwainzi: さて、もしそれ以上の質問ができないのなら、このテストは終わりです。たしかに確認できました。私が望んでいたとおりが、手に入りました。だから、もう彼のウシ(占い師に差し出した料金の硬貨)をもらっても、問題在りません。この場に間に合わなかったのは(その硬貨を入れるべき)ムコバ(mukoba61)の件です。あれら私の子どもたち(瓢箪子供)が、収まる(その中に腰掛ける)ことになるのですが。 Munyazi(Mun): この場で必要なのは、ほんの小さな編み籠です。あれら子供たち(瓢箪子供たち)を座らせるだけの。 Mw: それも新品のね。まだ使用されたことのない。ここにありますか?別のあれは駄目だよ。気に食わない。さて、彼のウシをもらいます。瓢箪子供も地面におくことになるな。ところで、あなたここにおられますか? Man: はい。 Mw: おばさん(Chane「母の姉妹」)、唱えごとしてもらえますか。私の喉は声がでないんですよ。え、もしもう帰ってしまったのなら、それらの鶏をもってきて、それに唱えごとしてしまいましょう。もう問題ないでしょう。私の喉は声が出ないんです。眠気のせいです。(妻のアンザジに向かって)お前、寝ちゃったの?唱えごとしてよ。唱えごとしてください。すべて終了しました。
3509 [占いの締めくくりの唱えごと]
Anzazi: おだやかに、私はお話します。私がお話するのは、あなたムルング子神とキツィンバカジ子神、そしてライカ子神、サンバラ人子神、バラワ人子神、クァビ人子神、カルングジ子神。 おだやかに、おだやかに、おだやかに、おだやかに。あなたアラブ人もごいっしょに。そしてバルーチ人、ロハニ子神、ソマリ人子神、コーラン導師、スディアニ導師、ジネ・ムァンガ169、ジネ・バハリ204、ペポムルメ26、カドゥメ165、ジキリマイティ205。 皆さまおだやかに、おだやかに、おだやかに。あなたムルング子神。私たちはあなたにあなたのウシ(占いの報酬の硬貨)を差し上げます。このウシはあなたのものです。ウシを昼によるにお護りください。ウシが冷たい風に打たれますように。このウシが、次々に双子を出産しますように。 しかしながら、もしあなたがそれをお護りになると言うのなら、ここにいる病気の幼な児のことです。その幼な児は、ずっと以前よりこのかた病気でした。そして(占いで)この児はその母親のせいで治らないのだと言われております。彼女が癒しの業(urongi)を要求されているからです。さて、癒しの業とはほかでもありません。これです。今日、ここで外に出てきたものです。
3510
Anzazi: あなたムルング子神、砦の中におられるあなたの子どもたち全員とともに、あの幼な児をとき解いて、健康にしてください。まず、あの両足が歩行できるようにと願います。どうしてあなた方はこの児を不具者として小屋の中に置いておかれるのでしょう、あの幼な児を。尋ねましたところ、あなたムルング子神のせいだと言われるのです。あなたが癒しの術(urongi)を欲しておられるのだと。 さて、あなたが一昨日、昨日乞うておられたというその癒しの業ですが、今日、この日に私たちがお与えしたのがそれです。もしあなたが本当に争いごとの主でいらっしゃるなら、どうかあなたの癒しの業をおつかみください。そして幼な児をとき解きください。私は欲します。今日、この日に、あるいは明日になったら、幼な児が歩くことを。その子が、あちらのすべての場所に、そしてそちらのすべての場所にたどり着けたとしたら、私は、皆さま方、世界の住人の方々だったのだ、皆さまは仕事を欲していらっしゃるのだと、たしかに知ることになるでしょう。 もしかしたら、他の方々もおられるのかもしれません。私たちはあなたムルング子神から始めました。でも他の方々は全員、まだ自分たちの癒しの業を与えられないでいる。もしそうなら、私たちは大急ぎで走ります(彼らの要求をかなえるために全力を尽くします)。幼な児はが、こういう有り様でしたので、私たちは皆さま方にこの仕事を差し上げました。
3511
Anzazi: たとえ物(資金)がなかったとしても、私たちは大急ぎで走ります、たとえ盗みを働いてでも。でも他の残された皆さま方も、お受け取りになります。 というのも、デナ・ムカンベ(dena mukambe157)もいます。彼、デナ・ムカンベは自分の仕事をずっとずっと以前より強くせがんでおられましたが、まだ与えられておりません。ブワナ・マサイ人もおられます。自分の仕事を欲しがっておられます、がまだ与えられていません。ディゴの女(muchetu wa chidigo130)も、マレラ子神(mwana marera182)もおられます。あのキバラバンド(chibarabando206)、小雨季の轟き、大雨季の轟き、あなた狂気を煮る女(mujita k'oma58)、あなたシェラ(shera)、水と石を掃く者(usheraye madzi na mawe)も。さて、皆さま方もまずは、身体につけるビーズ飾り(marero)を欲しておられますが、まだ与えられておりません。 この者(メムァカ)に力をお与えください。彼女の幼な児たち全員とともに。彼らが健康でありますように。あの地面を這う児を、まずは歩けるようにしてください。普通に起き上がって歩き、物を手に入れること。これが私たちが望むこと。皆さま方、世界の住人子神全員が、自分たちのお仕事を与えられますように。どうかしっかりおとき解きください。 このウシ(占いの報酬の硬貨)は、あなたアラブ人とロハニ子神のものです。
3512
Anzazi: そしてソマリ人子神、コーラン導師、ジネ・ムァンガ、ジネ・バハリ、ペポムルメ、ペポカドゥメ、ジキリ・マイティ、ペンバの女(chetu ra chipemba)。それはあなた方のウシです。 私は皆さま方に差し上げました。私が皆さま方にこうして差し上げるからには、私は、まず皆さま方が皆さま方の仕事をしっかりとおつかみになるよう望みます。何とともにでしょう。長声を打つこととともにです。「なんと、私たちは自分たちの仕事を与えられたんだ。」その仕事は、皆さま方がずっと以前からせがんでいらっしゃいました。あの幼な児が、地面に倒れたら、そのまま地面を引きずるように進む。それは皆さま方が仕事を望んでおられるからだと言われるのです。さあ、仕事とは今日外に出てきたこれです。皆さま方の仕事です。 私は、人の子供が脚をしっかりと保持し始め、二度と地面に戻ってしまわないことを願います。なぜなら、もし戻ってしまい、また戻ってしまうのなら、私たちは、あなたがたではなかったのだと知ることになるでしょうから。私たちは別の方面の、整えるべき問題を探します。あの幼な児を調えねばと。
3513
Anzazi: しかしながら、こうして私たちが望んでおりますのは、つつがなきことです。その子自身が歩きはじめ、まず彼女(メムァカ)のムコバ(mukoba61)を握るように。というか、彼女の助手(mutejiwe)にその子供がなるように。だって健康なのですから。本当に皆さま方世界の住人子神の皆様なのだと、私にわかるように。 ですから、この子をとき解きください。あなたルキ(luki105)とガザ(gaza194)、プンガヘワ子神(pungahewa)、ボコ・ムサウェ(boko msawe)。おだやかに、おだやかに。とき解きください、ドエ人子神(mudoe)とともに。キズカ子神(chizuka)とあなたジム(zimu)とともに。おだやかに、しっかりとき解きください。あなたキリマンジャロ子神、またの名をムレジ(murezi207)。 私たちは、あなたムルング子神とムキリマ子神208の仕事を出しました。皆さま方がそれをお受け取りになり、昼に夜に癒しの仕事をおなさりください。施術師は、眠らず、腰を据えず、忙しく動き回るものです(字義どおりには「行動を耕作する」)。私たちは皆さま方に仕事をお与えしました。どうか仕事を家の内に閉じ込めることのないように。仕事が家の外で歩き回るように願います。私たちが、「ああ、今日はあの人はヴィグルンガーニにいるよ」という風に語られますように。それこそ、私たちが望むものです。それこそが施術師らしさというものです。
3514
Anzazi: そのようにお聞き届けください、あなたムルング子神、あなたのお子様たち全員もご一緒に。争いはございません。とき解きください。サラマ、サラミーニ。 皆さま方のウシを昼に夜にお護りください。これらのウシが、双子、双子を産みますように。そんな風に産みますと(そのお金で)、皆さま方には皆さまの、ムルング子神の布を買って差し上げるでしょう。そしてあなたアラブ人にもあなたがたの布を買って差し上げましょう。とはいえ、今、私が望んでおりますのはつつがなきことです。サラマ、サラミーニ。あなたがた世界の住人の皆さまのいらっしゃるところ、どうかおだやかに、友たちよ。あの幼な児をとき解き、仕事を喜びをもってお受け取りください。 [アンザジの占いを締めくくる唱えごと、終了]
3515 [ムニャジ、憑依霊ドゥルマ人、その他の厄介な霊たちに向けての唱えごと209]
Munyazi: カルメンガラ(kalumengala30)、あなた奴隷(mutumwa210)、あなたカガイ(kagayi211)、あなたカシディ(kasidi31)。あなたという方は、昔にやってこられました。このドゥルマの土地に、昔にやってこられました、あなたという方は。そしてあなたはおっしゃる。「私は貧しい、みじめな者だ。というのも私は自分の仕事を求めている。私はずいぶん以前に仕事を乞うたのに、どうして未だにそれを見ることができないんだ?私は握った。決して離さない。私が離すとすれば、お前たちが私に仕事をくれたときだ」と。そう、あなたのご同輩たちもそんなふうに乞うていらっしゃるのですよ、あなた。まず人を殺す(死ぬほど苦しめる)、そして(要求したものを)手に入れる。静かにお願いしたら、与えられないとでも? さあ、今、あの幼な児の身体を引きずりながら進む有り様をごらんなさい。あなた方は、この児をいざりのように家の中にお置きになった。外には出てこない。あなた、ドゥルマ子神(のせい)なのですか。 ところで、今日、この日、あなたドゥルマ子神、私はまずあなたにお返しをしに参りました。私はあなたの薬液(mugovigovi213)をもってまいりました。私はまたあなたの椅子214をもってまいりました。このあなたの椅子を、私はあなたドゥルマ子神に差し上げます。あなたカルメンガラ、あなたカシディ、あなたニョエ(nyoe215)。もう二度と人々を隠れて待ち伏せしないでください。仮に隠れるということなら、あなたが隠れていたのは一昨日、昨日のこと(過ぎた昔のこと)です。
3516
Munyazi: またあなたは口を開くと、「私はもらえない。あいつらのずる賢さで何ができるか楽しみだ」とおっしゃる216。人々にはずる賢さなどありません。彼らにそれがないことをご存じないのですか。あなたが求めていたことはいつになったら与えられると考えておいででしたか?今こうして与えられたではないですか。 さて今、今日、あなたドゥルマ子神、まずあの幼な児を立ち上がらせることから初めてくださるようお願いします。さらにもし、あなたがこのムルング子神の仕事をなさるとすれば、この幼な児もあなたといっしょに伴ってください。もしあなたがこの児を立ち上がらせてくださったのなら。あなたカルメンガラ子神。 こんな風にしていらっしゃったなら、あなたも、あなたが欲しいとおっしゃっていたあなた自身のお仕事を手に入れることになるのですよ。あなたもあなたの子供(瓢箪子供)を手に入れて、ムルング子神のように、あなたも癒しの術をなすことになるのですよ。 どうか腹をたてないで。「なぜムルング子神には与えられて、私は与えられなかった、いったいなんでだ?」などとおっしゃらないで。あなたも、あなたの子供を与えられることになります。だって、ムルング子神より先に、あなたドゥルマ子神の子供(瓢箪子供)を出すことなどできないのですから。もしそんなことをしたら過ちになります。なぜなら、私たちはムルング子神を出し、続いてデナを、ニャリやマサイ人、そしてディゴの女といっしょに出すのです。
3517
Munyazi: 彼ら全てが済めば、さあ、あなたが、ゴジャマ導師(gojama168)やマウィヤ人(mawiya166)とごいっしょに、あなたの瓢箪子供を与えられることになります。あなたドゥルマ子神、あなた荒れ地の人(mutu wa nyika)、あなたはあなた自身の子供を手に入れます。 でも、今は、あなたにムルング子神の仕事を受け取って頂きたいのです。そしてあなたもごいっしょに仕事をしていただきたい。昼に夜に癒しの業をなす。癒やし手(muganga)は眠ったりしない。夜中の12時に起こされる。癒やし手は起こされる。「私の子供がこんな状態なので私はやって来ました。」癒やし手はその仕事を行う。これこそ私が望むことなのです。 しかしながら、ここ、この家では、いたるところつつがなくあってほしいのです。私の友たちよ。あなたがたがこの屋敷を苦しめていた係争のすべては、仕事が欲しかったということだったのですから。仕事は今日、今与えられた、これです。皆さま方、この屋敷全体をとき解きください。最初はこの病気の幼な児に始まり、他の歩いている者たちも。彼らをとき解きください、あなたカルメンガラ子神、あなたドゥルマ人、あなたカガイ、あなたカシディ、あなたニョエ。とき解け、我が友よ。仕事をとき解け。係争事は、もうございません。サラマ、サラミーニ。