(1)人類学の種類 anthropology = anthropos(ヒト) + logos(学問) 人間についての総合的研究 総合/専門化 自然人類学(physical anthropology) 形質人類学、bioanthropology, forensic anthropology etc. 先史考古学 霊長類学 人間集団間の生物学的差異 ↓ 人間に共通する生物学的基盤、その進化 文化人類学(cultural anthropology) 社会人類学(social anthropology)、民族学(ethnology) 政治人類学・法人類学 経済人類学 医療人類学 宗教人類学 教育人類学 ..... 映像人類学 観光人類学 人間集団間の生物学的差異に還元できない差異(文化的・社会的差異) (2)文化人類学の共通関心と基本作業 他者の世界に対する関心 ヒトは地球上できわめて多様な境遇(世界)のもとで生きている 異なる世界(境遇)で生を営むというのは、どういうことであるか 世界はどれくらい多様で、そうした多様な世界において、 どれくらい多様な生のあり方があるのか さまざまな社会での人間実践のバリエーション ↓ それぞれの社会を内在的に理解することの難しさ ↓ フィールドワーク 特定の社会に長期棲みついて、そこでの世界のあり方、捉え方、 その中での実践のシステムについて深く研究する || 「民族誌」ethnography 的作業 ↓ こうした多様な生のあり方、その差異はどのように説明できるか 何がこうした差異を生み出し、作り出しているのか ↓ 「文化」概念の重要性 ↓ 理論的作業
「文化」をめぐるありふれた語り口の検証
次の二つの資料を読んで、文化という言葉で自分が考えていることについて整理してから講義に臨んで下さい。
1. 産出的理解 = 集団の成員が生み出した「作品」 「高尚」/「民衆的、低俗 etc.」 カルチュラル・スタディーズの研究対象とする「文化」 2. 記述的理解 =集団の成員に共通して(広く・一般に・多く)見られる属性 「洋服を着るのが日本の文化だ」と言うことは正当 「民族誌記述」における「文化」 3. アイデンティティ概念 =(集団の)自己像/他者像 集団として自分たちがどういう存在なのか、彼らがどういったヤツラなのかを 決めつけようとする語りにおける「文化」概念 「洋服を着るのは『日本の文化』ではない」ことになるかもしれない 4. 説明原理としての「文化」概念 集団に特徴的な実践・習慣・制度などがいかにして成立しているのかを説明 するもの 各集団に広く見られる行動やものの考え方が集団どうしで違っている場合、 その違いがなにから生じているのかを説明するもの 集団に広く見られる特徴、その集団どうしの差異を説明するもの ‖ 文化人類学における中心概念としての「文化」概念 (1) 文化=振舞い方、ものの見方 ではなく (2)文化→振舞い方、ものの見方 なぜなら、もし(1)だとすると、 「振舞い方や、ものの見方の違いは、二つの集団の文化の違い が原因である」と述べることは 「振舞い方や、ものの見方の違いは、二つの集団の振る舞い方や ものの見方の違いが原因である」と同じになり、トートロジー 何も説明したことにならない。
今週のテーマについてさらに考えるために
太田好信 1994 「文化」 浜本他編『人類学のコモンセンス』第一章 学術図書出版
柳父章 1995「文化」三省堂一語の辞典