資料:アンダマン島民の交換実践


しばらくぶりで出会った二人の友人が、まず第一に行なうことは、互いに贈物を交換し合うことである。村落のありきたりの日常生活でも贈物の授受が絶え間なく行なわれる。...
隣接した地域社会間で催される集会のとき、贈物の交換はきわめて重要である。訪問者は多くの品物を持参し、これを訪問先の集団成員のあいだに分配する。訪問者が帰るときには主人側からの贈物を持たされる。...
他人の頼みを断るのは、良い作法に反することとさえ考えている。したがって他人から自分の持っている何かを所望されたなら、直ちに与えてしまうだろう。
(ラドクリフ=ブラウン)


六、七歳以上のこともが両親と暮らしていることはまずないという。既婚者がある家を訪問すると、その家の主人にこどもをひとり養子にくれというのが礼儀であり友愛の印であると考えられているからである。この申し入れは通常同意され、以後、こどもは養父と住むことになる。...実の両親も他のしりあいのこどもを養子にするのであるが、始終実子を訪ね、ときどき2、3日そのこを連れ出す許可を求める。 何人養子を迎えようと自由であるが、優しく、思いやりをもって接しなければならず、すべての面で、実の息子や娘のように扱わなくてはいけないし、養子の方も、孝養をつくさねばならない。

そのうちに「自称」父親の友人がその養子を自分にくれとたのむこともそうまれではなく、それもすぐに許されるし、実の両親の意向をわざわざたずねもしない。ただ定期的にこどもを訪ねることができるように、その変更を知らせてやるだけである。
(E・H・マン)


各地縁集団や各家族は...道具、武器などの生活に必要な一切のものを自給しうるから、これらの贈物交換は発達した社会における交易や交換と同じ目的を果たしているのではない。
(M・モース)