講義メモと参考文献


第十二回講義

前回の補足と続き

交換が連帯を生む
  どうしてか?

  利得を目指していない交換
    相手に与える行為 > 相手からもらう行為

交換と贈与
    前回レジュメ参照

互酬と交換(2):贈り物の不思議

負債の力学

    差異・遅延→負債の生成

    所有と贈与

        「彼らは人にものをあげるということをあれほど熱心に考え
          るがゆえに、自分のものと人の物とのあいだの区別はなく
          なるどころか、むしろひどくなるのである。」
	      (マリノフスキー:212)

    贈り手の優位

    恩と義理
    夏目漱石「坊ちゃん」

    贈り物の破壊的力
         北西海岸インディアン(トリンギト、ハイダ)のポトラッチ

    ポトラッチ

    

贈与の奇妙な性格

       与える行為 > もらう行為
                       しばしば何の利得ももたらさない
                       もらって迷惑
                       しかし受け取る義務
                             拒絶
                               即座にお返しをする 時間差
                               同じものを返す  種差

                       借りができる
                         地位の下落、面子の低下

                       借りを返す
                       →返礼の義務(返礼せずにはおれない)

        与えるリスク
             受け取られない(相手にされない)
             贈った品物に対する仕打ち
             (感染呪術)
        
        贈る行為は一種の相手との地位の競争
		    

贈与と社会関係
    人間関係を生成するプロセス
    
    贈与の競争的側面
              相手よりも優位に立つ「武器」としての贈り物
              互いにキャンセルしあおうとする
              
    関係承認的側面
              相互の関係を承認しあう行為としての贈与
              不均衡な贈与を受け入れる

              マノーニのマダガスカルでの経験
              先輩(上司)から後輩(部下)への奢り

    懐柔的側面
              圧倒的な優位に立つ他者に対して行使する影響力

                  臣下から王への貢物
                  人から神への供物


贈与行為と社会的距離(M・サーリンズ)

    一般的互酬性

    均衡互酬性
                     再分配
                     
    否定的互酬性


贈与効果

     人間関係に重大な効果をもたらす / 利得によって動機付けられた交換
              ↑
              贈られるものの経済的価値には比例しない

     贈り物のこの力はどこから来るのだろうか


贈り物とは何か

     ヒトにおける利他行為の類型(チンパンジーとの比較)(Tomasello 2009)

          助力

          情報提供

          物の共有・贈与


境界侵犯としての交換

           

           参照図



贈与交換と貨幣決済

     支払う と 祓う

     貨幣とは何か



     賃労働と無償奉仕

参考文献

浜本 満, 1994,「交換:ただより高いものはないわけ」『人類学のコモンセンス:文化人類学入門』第8章

B・マリノフスキー,1980(1922),「西太平洋の遠洋航海者」泉靖一編『マリノフスキー/レヴィ=ストロース』世界の名著71、中央公論社

M・トマセロ, 2013 『ヒトはなぜ協力するのか』 橋彌和秀訳、勁草書房(Tomasello, M., 2009, Why We Cooperate, MIT Press)

M・サーリンズ, 1984,『石器時代の経済学』山内昶訳, 法政大学出版局

R・ベネディクト,1976(1946), 『菊と刀:日本文化の型』長谷川松治訳, 社会思想社

夏目漱石, 1991(1906),『坊ちゃん』角川書店