「文化」概念の多義性とその混線
(青字は受講票の皆さんの意見より抜粋)
1. 産出的理解 =集団の成員が生み出した「作品」
「高尚」/「民衆的、低俗 etc.」
カルチュラル・スタディーズの研究対象とする「文化」
「文化とは人間の精神活動の所産である、ある集団社会の世界そのもの。」
「特定の地域に住む人々が、その地域に基づいて生活を営み続けて独自の
生活様式を成立させた結果生み出されたものが文化」
「(異なる集団が)それぞれの集団内で作り上げたルールや習慣。」
「人が生きるために最低限必要な行動以外の行為(音楽や芸術や趣味など)」
2. 記述的理解 =集団の成員に共通して(広く・一般に・多く)見られる属性
「洋服を着るのが日本の文化だ」と言うことは正当
「民族誌記述」における「文化」
「ある社会集団の中で共通して見られるような、振る舞いや行動、規範、規則
などの特徴」
「ある集団内に共通する規範、思想、行動様式。」
「その民族が誕生してから現在までの歴史の中で生まれた伝統、ルール
などの総称」
「その地域それぞれで違う生活習慣のことだと思う。」☆
「ある一定の地域で発達した、その地域独自の習慣。」☆
「国、地域、家庭など共同体内で代々築かれていく生活におけるクセ(特徴)
のようなもの。共同体内では普遍的に行っていても他の共同体からしたら
異質。」☆
「その地域で長い時間をかけて積み重ねられた」☆
「古くから根付いて、今でも受け継がれている慣習や風習、伝統的なもの」☆
☆「伝統」という概念で今現に行われていることと区別して文化を捉える
なら、3と近いかもしれない。
あるいは他の集団と違うものだけを指して文化というなら、これも3の
概念に近い。
3. アイデンティティ概念 =(集団の)自己像/他者像
集団として自分たちがどういう存在なのか、彼らがどういったヤツラなのかを
決めつけようとする語りにおける「文化」概念
「洋服を着るのは『日本の文化』ではない」ことになるかもしれない。
他の集団とは異なる独自の特性
普遍的なものとは区別される、集団固有の局所性(parochiality)
「その土地・風土の独特な生活様式だと思います。着ている服、食べ物、住んで
いる場所など他にはないもの。たとえば着物を見れば日本だとわかるし、チマ
チョゴリを見れば韓国だとわかるように、その土地独特のものや風習、習慣を
指すのではないかと思います。」
「文化とはそれぞれの国家や民族に特有の行動や生活における様式の総体であり、
その民族をその民族たらしめるひとつのアイデンティティである」
「一つの社会を形成する人間の集団がどのような集団か、その集団の内部の人間が
その集団に所属していることを確認するためのものであり、また
その集団の外部の人間が自分たちの集団と違うものだと区別するためのもの」
4. 説明原理としての「文化」概念 =プログラムとしての文化
集団に特徴的な実践・習慣・制度などがいかにして成立しているのかを説明する
もの、
「文化とは、その国や地域で暮らしている人々の生活や振る舞いの元となっている
集団的におおよそが一致している考え方、思想」
「集団の中で共有されている価値観、世界観。行動習慣がそれに基づいている、
それらを共有することによって、その集団の社会をなりたたせている」
集団どうしの差異を説明するもの
‖
文化人類学における中心概念としての「文化」概念
上の3つとは混同しないようにしよう
文化の違い=振舞い方、ものの見方の違い
ではなく
文化の違い→振舞い方、ものの見方の違い
集団の間に見られる差異に関係している
文化(直接観察できない原因) → 習慣、行動様式など(観察、記述可能な現象)